そういう頃合い
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。

  


世間様がリオ五輪に沸き、
某ポケモンのアプリが社会問題にまでなってた夏も
もはや遥か遠くなっての夢まぼろし。
朝晩の風もすっきりと爽やかに感じられ、
見上げた青空はすっきりと高く。
どこからか甘く華やかな金木犀の香りも届くことにて
やっとの秋めきを感じる今日この頃。

「そいや、夕方 陽が落ちるの早くなったよね。」
「……。(頷、頷)」
「前はまだ白々明るかった7時くらいの時間帯が
 気がつきゃもう真っ暗だもんね。」

平日は学校帰りがそのくらいの時間帯。
それでなくたって、学園祭の準備で活気づいてる頃合いで、
部活のあるなし関わらず、みんな遅くまで居残っていて。
なので、

「自宅が遠い子は親御さんも心配してないかなぁ。」

と。
同じ在校生側の立場だというに
案じる側の 親心の発露も色濃い発言になってしまうのは。
しっかり者の白百合さんだからか、
それとも、中身が一部ほど“過去”の蓄積ありというややこしい身だからか。

「ややこしいは余計です。」

おおう、聞こえていたのか、睨まれてしまったぞ。(笑)
目尻がやや垂れて甘い印象のする双眸をちょっぴり眇めて見せたものの、
そんなのお芝居、本気じゃありませんということか。
すぐにもにっこり笑い、傍らのお友達二人へ“ねーvv”なんて愛想を向ける
水色の双眸に金の髪した美貌のお嬢さん、
白百合さんこと七郎次といい。
大好きなお友達のはんなりした笑顔へ、
肉づきの薄い口許をうにむにさせて
クールビューティらしからぬ可愛げ、
彼女なりに精いっぱい微笑い返す
紅ばらさんこと久蔵といい。

「なんか最近は
 私も久蔵殿の思うところが随分と把握できるようになりましたよvv」

寡黙で表情も薄い美人さんへ、
今のはこちらがつられるほどの笑顔でしたしねと、
愛嬌たっぷりパキーっと笑うひなげしさんこと平八といい。
衣替えしたばかりの濃色の制服をまとい、
だが安穏なままに秋を迎えたぞというよなお顔でいるものの、
もーりんが書かなかっただけで、
彼女らの夏もそれなり色々なことが山ほどあった。
リゾート地にはわざわざ出かけなかったけど、
知己の伝手がたんまりあってこそという穴場の海や高原などへは出かけたし、
そういう土地にての大活劇も相変わらずにやらかしちゃあ、
保護者の皆様にも色んな意味から思い出深い夏にして差し上げたようで。(おいおい)

「あらあら何のお話かしら。」
「私たち、それはいい子で過ごしましたのに。」
「……♪(頷、頷)」

ツ〜ンとお澄ましを決め込んでいるが、
それ以上お云いなら、よござんす、明らかな証拠をお見せなさいなと、
暗に言いたげな にやにや笑いなのが匂って来るぞ、あんたたち。
う〜ん、何も書き残してかなかっただけに
言い返せる証拠が何にもないのが
他でもない自業自得で歯がゆいったら。(ううう)
すっとぼけるお顔もお上品に
軽快さはあれどあくまでも楚々とした歩みを運ぶのが、
他の生徒のお嬢様がたもたんと吸い込まれてゆく某女学園の大きな正門で。

「白百合のお姉さま、おはようございます」
「三木さま、おはようございます」
「林田様、今日も綺麗なおぐしですねvv」

それぞれにご挨拶の声も飛ぶほど人気者のお三人もするすると紛れ込み、
穏やかな女子高生活が、さあ今日も始まらんとしておいででございます。



     ◇◇


さて、冒頭でも触れましたが、
季節は秋本番で、
女学園ではまずはの体育祭が今月半ばの連休前後に催され、
続いて11月の頭に学園祭が控えおろう、もとえ控えておいで。
よって、校舎のあちこち、何とはなくそわそわさわさわ、
落ち着きがない、もしくは ややテンションの高い空気がそこここに満ちてもいて。
夏休みからとっかかってた準備万端なクラスやグループであれ、
本番が間近いという焦りもあってか、
あれはどうなった?
確かBパートまでは編集済みですわよ?
音合わせやっとこうか?
あああ、でもでも音楽室も視聴覚室も来週まで空いてないとか…などなど。
廊下でお互いを掴まえ合うようにして顔を見合わせ、
申し送りだか申し合わせだか、
焦ったように声を掛け合ってるお嬢さんたちの図が始終見られるのが、
一丁前でそのくせ幼くて何だか微笑ましい。

「体育祭も結構にぎやかで沸くんですがね。」

マスゲームほどではないけれど、
チアフラッグという
大人数でグラウンドいっぱいに広がって勇ましい旗捌きをご披露する
演武のような演目もあるし。
何より、
運動神経のいい上級生や元気者の下級生に人気が集まって、
女子ならではな黄色い声が飛び交う日でもあり。

「でもそっちよりも準備することが多いですしねぇ。」

数日がかりの催しだし、
広い校舎や敷地のあちこちで
そりゃあ様々な出し物やら演目やらが繰り広げられるとあって。

「執行部や実行委員会の皆様、目の下にクマが出来ちゃうほど大変だとか。」

当日までの準備は勿論、開催中の様々な管理も請け負うのだから、
そりゃあ責任も重大だろうねぇと、案じて差し上げつつお弁当箱の蓋を閉じたお3人。
毎度お馴染み、スズカケの木陰にて、
お弁当を広げてランチタイムを堪能していたお嬢さんたちであり。

「そいやウチのクラスの模擬店のメニュー、
 どういうラインナップになってるの?」
「本来だったら 出来合いのケーキとかクッキーかだけど。」

こちらの学園の場合、お嬢様がたがそれぞれのお家から持ち寄るとか言ってるため、
お抱えのシェフ謹製の代物が集まるに違いなく。

「衛生管理を言えば、買ったものをそのまま出す方が無難じゃあるんだけれどもね。」
「でもまあ、それこそ“プロ”が作ったものだから、安全性にも問題はないんじゃあ…。」
「それって…う〜〜ん。」

何と言いましょうか、それはそれで釈然としないと思える七郎次なのは、
さほど深窓の令嬢感覚ではない身だからか。

「中学までは地域の公立学校へ通ってましたしねぇ。」
「その点、久蔵殿の方がお嬢様だよね。」
「???」

ややこしい背景はともかく。

「休憩で立ち寄られる人には、がっつり食べるものじゃない方が。」
「野外カフェの方で粉ものとか鉄板焼きとか提供してるしね。
 飲み物だけのお客様向けにクッキーとかマフィンってのは判るけど。」

なんかもうちょっと工夫を凝らしたいと思う白百合さんなのは、
当日のメイド役だけってのが退屈だと思ってもいるせいか。
特に暇なわけじゃあなく、前日まであれこれと役割を割り振られてもいる身だが

「関わるからには何かやり遂げなきゃあ。」
「おおう、熱血。」

そういうんでもなくてと、
むずがるようにきれいな拳を振り回し、照れ隠しをする白百合さんへ、

「バザーみたいに。」

ぽそりと呟きが漏れ聞こえ、おやとそちらを見やった白百合さんへ、

「クッキー焼こうか。」
「おお、久蔵殿、ナイスだvv」

三華特製クッキーは五月祭で出品したところ大好評。
それ以降、お茶会だのバザーだのというと
“八百万屋”に集まって焼いては供しておいで。
それを思い出しての提案をした紅ばらさんは、
凛々しいクールビューティぶりを 男装の麗人ぽく憧れられているけれど、
実はひなげしさんに負けないくらい
スィーツづくりもお得意で、

「ステンドグラスクッキー。」
「え?なんですか、それvv」

お初の単語へキョトンとする平八だったのへ
えっとぉとポッケから引っ張り出したスマホに
ちょちょいと呼び出したお料理のサイト。
すぐに呼び出せたあたり、彼女自身も気になってた代物でもあるようで。

「わ、なにこれ、真中が空いてる。」

完成品の写真を見ると、
真ん中が赤や緑とカラフルだけれど、
ジャムを塗ってあるのじゃなくて、重なった下のが透けて見えている。

「飴を溶かし入れてあるんですね。考えたなぁvv」

型抜きしたクッキーを焼く途中で、
小さめの飴を真ん中の刳り貫き部分へ置いて溶かし込むらしく。
ステンドグラスみたいな見栄えでなかなかお洒落だし、
食感も薄い飴がぱりぱりと一緒に食べられて楽しい一品だということで。

「じゃあこれを試作してみて、
 上手くいったらば当日のサプライズということでvv」

「ええ、配って回りましょvv」

ふふーvvと話もまとまったところで、
楽しそうな笑顔でお顔を見合わせる三華様がただとあって、

「どうされたのかしらvv」
「何か楽しそうな相談事をされておいでですわね。」
「学園祭のお話かしらvv 」
「まあ、何をなさるのか、私どもも楽しみですわねvv 」

そんなマドンナたちをこそりと見守るお嬢様がたまでもが、
ほこりと嬉しそうなお昼どきになった秋のひと時でございます。





   〜Fine〜  16.10.07


 *長らくのご無沙汰でございました。
  夏休みを飛んだ格好で過ごした身。
  色々と話題に乗り遅れてたのが悔しいです。
  とりあえず、今時分のお嬢さんたちを試し書き。

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